採用選考では費用や時間に制限があるため、いかに効率よく良い人材を獲得できるかどうかが重要となります。そこで多くの企業が採用選考の補助ツールとして「適性検査」を導入しています。今回はあらゆる適性検査の中で、最も多くの企業が導入している「SPI(エスピーアイ)」をご紹介します。
SPIは日本で最も導入されている適性検査
SPIは「Synthetic Personality Inventory」の略称で、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが提供する適性検査の1つです。知的能力や性格といった個人の「本質」を測定し、人物の総合的なイメージを明らかにする検査となります。
SPIが開発されたのは1974年のことであり、現在、年間14,400社が利用。受検者数は延べ215万人と、日本で最も活用されている適性検査となります。※2022年8月13日時点
出典:SPI3公式サイト|リクルートの適性検査
https://www.spi.recruit.co.jp/
SPIの試験内容
SPIの試験内容は「性格検査」と「基礎能力検査」の2つで構成されています。それぞれの内容をみていきましょう。
性格検査
性格検査では個人の「性格特性」を測定します。
- 忍耐力には自信がある
- 立ち直りは早い方だ
このような質問から得た回答を統計的に処理し、仕事や組織への適正・人物の人となりを測定するのが、性格検査の役目です。
性格検査は点数の高さだけをみる検査ではありません。点数の高い・低い場合に、それぞれどのような思考や行動につながるのかを測るものです。人物を立体的・多角的にイメージするのに役立ちます。
基礎能力検査
ビジネスに不可欠な基礎能力を測定するのが、基礎能力検査です。基礎能力検査は「言語分野」と「非言語分野」の2つに分けられ、それぞれ次のような能力を診断します。
- 言語分野:言葉の意味や話の要点を的確に理解しているかどうか
- 非言語分野:数的処理能力または論理的思考力があるかどうか
これらの能力は様々な仕事で必要となる「知的能力」とされ、企業で活躍するために欠かせない力となります。知的能力が高ければ高いほど、知識を素早く吸収し、理解・応用する資質があると考えられているのです。
なお、企業によっては「構造的把握力」や「英語」の問題も能力検査で出題される場合があります。
SPIの特徴3つ
ここからはSPIの特徴をご紹介します。
40年以上の豊富な実績
40年以上の豊富な実績が、SPIの大きな特徴の1つです。SPIが開発されたのは1974年のこと。適性検査の中で最も歴史が長く、裏付けとなるデータが豊富であることが、SPIの大きな魅力と言えるでしょう。
適性検査は受検者が応募者全体の平均と比較した際に「どのあたりに位置するのか」を測定するものです。つまり、この平均がどれだけ正確に算出されているかが、品質を左右するわけです。
40年以上に渡り蓄積した豊富なデータがあるからこそ、幅広い企業の採用選考を支援することが可能となっています。
信頼性の高いデータ
信頼性の高いデータを得られるのも、SPIの特徴の1つです。現在、SPIの導入企業数は14,400社にのぼり、企業規模を問わず、あらゆる業種の企業に利用されています。そのため偏りの少ないデータサンプルをもとに、信頼性の高い測定結果が得られるのです。
また受験者のレベルに合わせて出題内容が変わったり、受検の様子を監督したりするシステムが施されたりと、正当性の高いデータも評判。
さらに開発以降、問題のメンテナンスや追加など毎年見直しも続けられ、品質の高さがSPIの強みとなります。
分かりやすい報告書
見やすさにこだわって作成された分かりやすい報告書もSPIならでは。複雑なグラフや難しい解説文はありません。適性検査を初めて利用する企業でも、結果を簡単に活かせるでしょう。
さらに報告書には面接の際の質問や、受験者への接し方も記載。例えば、新卒採用者向けの報告書では25の観点から77パターンの質問例が用意され、短い面接の中で人物面を深く理解するのに役立ちます。
SPIの種類は4つ
SPIの種類は以下の4つです。ターゲットごとに区分されているのが特徴となります。
- SPI3-U(大卒採用向け)
- SPI3-G(中途採用向け)
- SPI3-H(高卒採用向け)
- GSPI3(グローバル採用向け)
それぞれ難易度や試験内容が異なり、大卒・中途採用向けの方が高卒採用向けより難易度が高くなっているようです。
SPIの受験方法は4タイプ
SPIには次の4つの受験方法が用意されています。
- テストセンター
- Webテスティング
- インハウス
- ペーパーテスティング
テストセンター
テストセンターとはSPIを提供するリクルートマネジメントソリューションズが運営する「テストセンター会場」で受検する方法です。テストセンター会場は全国主要都市に設置され、監督者のもとSPIを実施します。
テストセンター形式は自社でSPIを実施する必要がなく、また、会場の手配や当日の運営は運営元が担当するため不要です。採用担当者の負担を減らせるメリットがあります。
Webテスティング
受検者が自分のパソコンを使用し、Web上でSPIを受検する方法がWebテスティングです。パソコンとネットワーク環境さえあれば、試験会場に足を運ばずとも、試験を受けられる方法となります。
受検者の負担を大幅に軽減できる形式と言えるでしょう。
インハウス
インハウスは候補者が来社した際に、企業が用意したパソコンで受検する形式です。パソコンやインターネットを用意する必要がありますが、SPI実施と結果確認、面接を1日で済ませられるメリットがあります。
ペーパーテスティング
ペーパーテスティングとはマークシートで受検する筆記試験のことです。企業が用意した会場でSPIを実施します。
たくさんの人を集めて会社説明会やセミナーを行う際に、ペーパーテスティングを行う企業が多くなります。
SPIの初期費用・料金体系
次にSPIの初期費用と料金体系をご紹介します。
初期費用
SPIの初期費用は「無料」です。初期費用はかからず、受検者1名ごとに利用人数分の料金が発生します。
料金体系
SPIの料金は以下の表のとおりです。
*料金は全て税抜表示
SPI3−U(大学採用向け) | SPI3-G(中途採用向け) | SPI3-H(高卒採用向け) | GSPI3(グローバル採用向け) | |
テストセンター | 5,500円 | 5,500円 | 5,500円 | ー |
インハウス | 4,000円 | 4,000円 | 4,000円 | 6,000円 |
Webテスティング | 4,000円 | 4,000円 | 4,000円 | 6,000円 |
ペーパーテスティング | 5,000円 | 5,000円 | 5,000円 | 6,000円 |
SPIのメリット・デメリットや評判
適性検査の代表例とも言えるSPIには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。実際にSPIを導入している企業の声も合わせて紹介します。
SPIのメリット
まずはSPIのメリットをみていきましょう。
候補者の潜在能力が分かる
1つ目のメリットは候補者の潜在能力が分かることです。SPIが利用されることの多い新卒採用では、職業能力や職務適正が未知数の候補者を対象に採用を決定します。そのため採用担当者には候補者の「潜在能力」を見抜くチカラが不可欠です。しかし、そのチカラは目に見えるものではなく、「潜在能力」を見極めるのは簡単なことではありません。
SPIは候補者が持つ可能性や資質=潜在能力が明らかになるテストです。SPIを導入することにより、判断の基準が数値化・可視化され、優秀な人材を確保できるでしょう。
採用が効率化する
採用が効率化する点も、SPIを導入するメリットの1つです。採用の場において、SPIをふるい分けのテストとして利用できるためです。具体的には自社にとっての採用指標を定め、結果が基準以下であれば不合格、基準以上であれば選考を進めるといった具合に、SPIの結果に基づいて候補者をふるいにかけることができます。
採用にかけられる時間には限りがあります。候補者全員に面接をすることは現実的ではないでしょう。ふるい分けすることにより、候補者の人数を絞れば1人ひとりに時間をかけられ、その結果、自社にマッチした優秀な人材を効率的に確保できるメリットがあります。
入社後の配属にも活用可能
3つ目のメリットは入社後の配属にもSPIを活用できることです。入社後、職場環境や仕事にスムーズに適応するためには、職務や組織との相性がポイントとなります。
SPIは学歴や履歴書では見抜けない候補者の性格を明らかにします。SPIで人物理解を深めた上で、新入社員に適した職務や職場に配置すればミスマッチを減らし、入社後のギャップによる早期離職を防止するのに効果的です。
SPIのデメリット
つづいてSPIを導入するデメリットをみていきます。
候補者が離脱する可能性がある
SPIを実施することにより、候補者が選考を離脱する可能性があります。SPIに限った話ではありませんが、適性検査は候補者の負担となります。候補者が他の選考が上手く進んでいる場合、選考を辞退してしまう可能性があるため注意が必要です。
この場合、適性検査の結果だけでなく、面接も含めて合否の判断を下すという旨を候補者に伝えておくといいでしょう。SPIの結果だけで合否の判断をしないと伝えることにより、選考辞退を抑制できます。
時間や場所を問わず受検できる「Webテスティング」も、候補者の負担軽減に有効です。
SPIを導入した企業の評価
実際にSPIを導入している企業の評価をご紹介します。導入の際の参考にしてください。
良い評価
SPIには以下のような良い評価がありました。多くの企業がSPIを使用することで、自社にマッチする人材を確保できたと評価しているようです。報告書が使いやすいとの声も多数ありました。
- 入社する人物の質が向上した
- 面接経験が少ない面接官でもスムーズに面接をすることができる
- 面接官の主観に頼らず、客観的なデータによって公正な評価ができた
- 候補者のタイプに合わせたコミュニケーションが取れる
- 自社が求める人材の市場ができ、安定的な採用ができるようになった
- 報告書が見やすく、的確である
- 報告書の結果をもとに個人に適した教育プログラムを組める
悪い評価
SPIには以下のような悪い評価がありました。問題数が多く時間を取られるため、候補者の負担となる恐れがあるようです。
- 採用試験にてSPIを実施していたが、国語や算数(数学)等の基礎的な問題が多く、それにかなりの時間を要していて多くの時間を取られていた
SPI導入の流れ
SPIは以下の3ステップで簡単に導入できます。
- 登録票を作成する
- 登録票を送付する
- サービスに申し込む
まず「登録票」を作成し、自社の情報を登録します。そして、作成した登録票を印刷し、押印の上、運営元のリクルートマネジメントソリューションズに送付します。(急ぎの場合はシステムへのアップロードも可能。)
登録票を送付したら最短1営業日でテスティング管理システムのIDとパスワードが発行されますので、テスト管理システムにログインし、サービスの申し込みをすれば完了です。
さいごに
40年以上の豊富な実績に基づいた品質の高さにより、適性検査の中で最も選ばれているSPI。学歴や書類だけでは見抜けない人物の「本質」を見極められ、人物を総合的かつ具体的にイメージするのに役立ちます。採用の場や配属など、あらゆる人事評価シーンでの活用が可能です。
また、こちらの記事では各適性検査ツールの比較を行なっています。「どのように比較すればいいの?」「予算にあった費用のサービスを知りたい」という方におすすめです。
【徹底比較】適性検査ツールを5つの視点で比較
採用活動は、企業の今後を左右するといっても過言ではありません。自社の目的に合った適性検査を活用することで、書類選考や面接のみでは把握しきれなかった情報も踏まえて、採用活動の精度や効率アップが期待できます。
当サイトでは他の適性検査ツールも紹介していますので、気になるものがあればぜひ読んでみてください。