昨今、各業界の企業に注目されているコンピテンシー。自社の人材をマネジメントする際や採用活動にコンピテンシー検査を活用するケースも少なくありません。
コンピテンシー検査がどんなものなのか、特徴や導入メリットを正しく理解したうえで導入すれば、その効果を最大限に発揮できるでしょう。
今回は、そんなコンピテンシー検査の特徴とオススメ厳選6ツールについてご紹介します。
コンピテンシーとは?
そもそも、コンピテンシーとは、1950年代に心理学用語として使用されるようになり、1970年代にアメリカで広く一般化された概念のことです。日本では、1990年代以降、企業の多くが人事評価や採用面接などに導入するようになりました。
このコンピテンシーは、企業でスキルや経験を活かし、高い成果をあげることのできる「ハイパフォーマー」と呼ばれる人材に共通する行動の特性や思考性を意味します。
具体的には、オフィス内の営業部門やシステム部門などに配属され、自分に割り当てられた職務や役割において、優秀で大きな成果を出す従業員に共通して見られる特有の行動や思考の傾向を分析することです。
似ているものとして、一般的に専門的な能力や技能などを表す「スキル」という言葉や人材の持っている能力・才能・技能などを表す「アビリティ」、「個性」などがありますが、これらとコンピテンシーは同じではありません。
コンピテンシーはスキルをどう使うか・どう用いるかという行動や思考の傾向であり、スキルそのものとは異なります。
またアビリティが能力・才能・技能そのものを意味するのに対し、コンピテンシーはそれらを発揮する力を意味する概念です。
個性についても同様で、各従業員の持っている個性をどう活かすかという行動や思考のことをコンピテンシーといいます。
コンピテンシーとコアコンピテンシー
コンピテンシーとともに使用される用語には、コアコンピテンシーもあります。
コアコンピタンスとも呼ばれていますが、これは、米国の経営コンサルタントのゲイリー・ハメル氏が創設した概念で、直訳すると核となる能力のことです。
このコアコンピテンシーは、主に3つの項目に大別できます。
- 企業の組織としての得意分野
- 競合他社と差別化できる自社の技術や能力
- 幅広い市場や分野で活用できる技術や能力
たとえば、メーカーなどが保有している特殊な技術や商品のブランド価値など、競合他社が真似できない、その企業自体が持っていて幅広い市場で勝負できる技術や価値がコアコンピテンシーです。
コンピテンシーが個人の持っている高い成果を発揮する力を指すのに対し、コアコンピテンシーは、組織が顧客や社会に貢献できる力を指すというところに違いがあります。
コンピテンシー検査の導入メリット
大きな成果を発揮する従業員に特有の行動や思考の傾向を表すコンピテンシーは、当然、業界や職種・社風によって異なるもので、その内容は企業や部門によってさまざまです。
最近では、自社に適したコンピテンシーを明確化し、人事部門や管理部門などが客観的に評価して人材マネジメントに活用する企業が増えています。
具体的には、企業が、自社で高い業績をあげている「ハイパフォーマー」と呼ばれる従業員の持っている専門的な技術や培ったノウハウ、基礎的な能力などの詳細を観察し、なぜ「仕事ができる」のかを分析します。
この一連の流れを実践するために用いられるツールが、コンピテンシー検査です。
自社の「ハイパフォーマー」について分析した結果を基に、ほかの従業員や採用活動の候補者に本検査を実施すれば、さまざまなメリットを得られます。
このコンピテンシー検査を導入するメリットは、主に下記の5つです。
- 企業における部門ごとの行動特性がわかる
- 候補者の職務適性がわかる
- 候補者のパーソナリティを判断できる
- 職場での適性をシミュレーションできる
- ストレス耐性がわかる
企業における部門ごとの行動特性がわかる
まず1つ目は、企業における部門ごとの行動特性がわかるというメリットがあります。
本検査を実施すると、自社でどの従業員が「ハイパフォーマー」であるのかを把握できます。
また、表面的な書面の情報だけでなく行動特性を精確に分析するため、本検査を全従業員に実施すれば、自社の各部門の行動特性や思考の傾向を理解できます。
候補者の職務適性がわかる
候補者の職務適性がわかるのも、導入メリットの1つです。
採用活動では、候補者の希望する部署と能力にギャップがある場合も少なくありません。
候補者を採用後、本人が希望している部署に配属しても、能力の適性と合っていなければパフォーマンスの質は下がり、企業がそのことに長いこと気付かなければ、離職するリスクは高くなります。
そこで、本検査の実施により、本人が最も能力を発揮できる部署を見極めたうえで配属すれば、「やりたい仕事をしている」「イメージ通り」という満足度が向上し、離職率の低減につながるでしょう。
候補者のパーソナリティを判断できる
3つ目の導入メリットは、候補者のパーソナリティを判断できることです。
本検査を実施すれば、短時間の面接では判断できない候補者の内面について把握できます。
本来、必要な能力や求めるチームワークなど、採用活動で重要視するポイントは各企業で異なるものです。候補者のパーソナリティを正しく理解できれば、ミスマッチを回避し、適切な人材配置ができます。
職場での適性をシミュレーションできる
職場での適性をシミュレーションできるのも、導入メリットの1つです。
本検査を実施すると、候補者や従業員の仕事への適性だけでなく、実際に自社でどんなキャラクターになるかについても事前に把握できます。
部署ごとのコンピテンシーをしっかり確立しておけば、候補者や従業員を配属した先で上司や部下との相性について事前に判断できるため、将来的な人間関係のトラブルを回避できるでしょう。
受検者のストレス耐性がわかる
5つ目の導入メリットは、受検者のストレス耐性がわかることです。コンピテンシー検査は、ハイパフォーマーの数値から必要な項目について分析できます。
ストレス耐性の項目を数値化して比較すれば、受検者がどんなストレスに弱いのか、どの程度の耐性を持っているかの把握が可能です。
企業側が、候補者や従業員のストレス耐性を知っておくことで、離職率を低減できますし、オフィス内の仕事や人間関係などへの不満を解消できるでしょう。
コンピテンシー検査のオススメ6選
コンピテンシー検査を導入すると、自社の人事評価や採用活動・社員教育を含めた能力開発・組織マネジメントなど、幅広いシーンに活用できます。
ここでは、コンピテンシー検査のオススメ厳選6ツールを紹介しましょう。
VANTAGE
VANTAGEは、心理学と認知行動学の2つの観点から研究開発されたコンピテンシー検査です。受検者が作為的に回答できないような設問で構成されており、その独自性から特許権が認められています。
本検査は全部で38問で、4つの選択肢からなる設問は、優先順位を並べ替えて回答するよう構成されています。検査時間は10~15分程度で、パソコンとスマートフォンのいずれにも対応しているWeb形式です。
この「VANTAGE」には、2つのプラン「しっかり診断プラン」と「フルプラン(ミッション付き)」があり、料金体系は下記の通りです。※2022年8月4日現在
<項 目> | <料 金> |
初期費用 | 0円 |
契約費用 | 0円 |
月額費用 | 0円 |
ビジネス能力診断 | 3,500円/人 |
ビジネス能力診断+能力向上ミッション配信 | 11,000円/人 |
ミツカリ
ミツカリは「ミスマッチはよくない」「アンマッチは悪くない」というアプローチにより、互いの願望や考えが違っても、事前に認識すればミスマッチを回避できるという観点から開発されました。
具体的にはAIによって、受検者の性格の傾向や価値観・相性を算出・数値化するもので、5つの選択肢から直感で回答する全72問の設問によって構成されています。検査の所要時間は、約10分です。
パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットにも対応し、日本で働く約8割の外国人労働者が母国語によって受験できるよう、下記の9カ国語を網羅しています。
- 日本語
- 英語
- 中国語(簡体字)
- ベトナム語
- タガログ語
- ポルトガル語
- スペイン語
- ネパール語
- ミャンマー語
このミツカリには2つのプラン「ベーシックプラン」と「エンタープライズプラン」があり、大きな特徴は、いずれのプランもコンピテンシー検査に該当する「ハイパフォーマー分析」を自社の全従業員に無料で実施できることです。
「ベーシックプラン」の料金体系は、下記の通りです。※2022年8月4日現在
項 目 | 料 金 |
自社従業員受験費用 | 0円 |
初期費用 | 0円 |
候補者1人あたりの受験料 | 2,000円(税抜) |
なお、「ベーシックプラン」のサポート体制は、「チャット・メールサポート」のみで、問い合わせの場合は、3営業日以内の返信となります。
また、「エンタープライズプラン」の料金体系は、下記の通りです。
登録従業員数(人) | ~50 | ~100 | ~200 | ~300 | ~500 | ~2,000 |
月ごとの価格(税抜) | 20,000円 | 30,000円 | 60,000円 | 80,000円 | 100,000円 | 200,000円 |
この「エンタープライズプラン」は年間契約の一括払いで、2,000人以上に検査を実施する場合は、株式会社ミツカリへの問い合わせが必要です。
サポート体制は下記の4つで、チャットまたはメールでの問い合わせの場合は、1営業日以内の返信になります。
- チャット・メールサポート
- お電話でのサポート
- 導入設定サポート
- コンシェルジュサービス
ミイダス
ミイダスは、ミイダス株式会社の提供する最先端のテクノロジーを使用したコンピテンシー検査です。このほか、ミイダス社は、市場価値診断・パーソナリティ診断・バイアス診断ゲームなども提供しています。
本検査により、自社従業員がどんな行動特性を持っているのかを診断することで、候補者の特徴を精確に把握できます。
この「ミイダス」の特徴は、従業員15人までは無料で実施でき、パーソナリティやストレス要因などの41項目から行動特性や思考性を可視化できることです。
設問は、第1部が30問、第2部が132問で構成され、合計で約30分程度の検査時間を要します。料金については、ミイダス社への問い合わせが必要です。
Another 8
Another 8は、株式会社ヒューマネージが、タワーズワトソン株式会社(現:ウィリスタワーズワトソン株式会社)と共同で開発し、日本で初めて提供されたコンピテンシー検査です。
ヒューマネージ社は、新卒採用の適性検査ではシェア第3位を誇っており、このコンピテンシー検査のほか、コーピング適性検査「G9」、チーム・コミュニケーション適性検査「W8」、エンゲージメント適性検査「T4」などを提供しています。
本検査はペーパーテスト・WEBテスト・テストセンターの3つに対応しており、導入までに5営業日を要します。検査時間は15分で、結果は検査当日に判定可能です。
新卒・中途採用、人事評価、配置転換、内定者フォローなどのさまざまな目的により、これまでに大手企業を中心に約2,000社以上の導入実績があります。
料金は、1名につき2,000円(税別)で、実施形態や人数に応じた各種料金プランがあり、詳細についてはヒューマネージ社への問い合わせが必要です。
HuTaCT
HuTaCTはコンピテンシーにより、チーム力の最大化に重点を置いた既存従業員向けの「チームコンピテンシー」を設定できる、TDCソフト株式会社の提供する「タレントマネジメントシステム」です。
タレントマネジメントシステム「HuTaCT」の「チームコンピテンシー」を導入すると、自社従業員のコンピテンシーを管理し、チームシミュレーション機能でチーム全体のパフォーマンスを分析することにより、最適な人材配置が可能です。
本検査は、自社従業員の持っている資格・経歴・評価・研修などのデータ、人事基礎情報などからコンピテンシーモデルとしてチームのモデルケースを設定すれば、チーム全体の人事配置をシュミレーションできます。
主な活用事例は、各チームの人材から特に売上の高いモデルチームを設定し当該モデルに近づけるための人員配置、および、従業員の中で活躍しているキーマンを特定し、ほかの従業員を当該モデルに近づけるための育成計画の策定などです。
この「HuTaCT」の料金体系は、下記の通りです。※2022年9月16日現在
項 目 | 料 金 |
初期費用ドメイン開設 | 10,000円/企業 |
導入費用 | 別途相談 |
月額最低利用料金 | 50,000円 |
月ごとの従業員ライセンス費用 | 30円/人 |
月ごとの管理者ライセンス費用 | 1,000円/人 |
なお、「チームコンピテンシー」を導入する際は、TDCソフト社への問い合わせが必要です。
HYOUMAN BOX
HYOUMAN BOXはAI CROSS株式会社が開発した、自社の従業員や組織と採用活動の候補者との相性を測定し、採用の決定や入社後の人材育成などに活用できるコンピテンシー検査です。
新卒・中途採用、既存従業員のいずれにも実施でき、人材それぞれの適性やヒューマンスキルを把握するのに役立ちます。この「HYOUMAN BOX」は、これまでに30年の運用実績と約12,000社の導入実績があります。
本検査の設問数は全91問で、9項目のヒューマンスキルと10項目のパーソナリティによって分析することにより、従業員や候補者の行動特性や意欲などの傾向を診断できます。
トライアルは、検査期間が2週間で、無料で実施できる人数は3人までです。受験回数は、従業員に対し3回で、採用活動の候補者は受検できません。
また、料金体系は、下記の通り、4つのプランに分かれています。※2022年9月16日現在
ライト | ライトプラス300 | ライトプラス600 | ライトプラス900 | |
無料枠数 | 50人 | 300人 | 600人 | 900人 |
月額基本料金 | 25,000円 | 135,000円 | 246,000円 | 333,000円 |
追加料金 | 500円/人 | 450円/人 | 410円/人 | 370円/人 |
受検回数 | 社員:3回
採用候補者:2,000円/回 |
無制限 | 無制限 | 無制限 |
期間 | 年間契約 | 年間契約 | 年間契約 | 年間契約 |
支払い | 年間契約 | 年間契約 | 年間契約 | 年間契約 |
このほか、コンサルティングのオプションを加えたプランについては、AI CROSS社への問い合わせが必要です。
さいごに
企業の各部署で最も活躍している人材のデータを軸に、候補者と分析・比較することで自社の人材マネジメントに活用できる検査ツールがコンピテンシー検査でした。
作為的に回答できる、モデルの作成に時間や手間がかかるなどの声もありますが、コンピテンシー検査を導入すれば、競合他社とは異なる自社の強みを発見できることでしょう。
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【徹底比較】適性検査ツールを5つの視点で比較
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