採用活動では限られた時間の中で、優秀な人材を確保する必要があります。そのため多くの企業が人材の見極めのために「適性検査」を採用活動に取り入れています。今回はさまざまな適性検査の中で「知的能力」と「パーソナリティ(性格適性)」を測定できる「玉手箱」について紹介します。
玉手箱とはどんな適性検査?
玉手箱とは受検者の「知的能力」と「パーソナリティ(性格適性)」の両面から測定する総合適正システムのこと。日本エス・エイチ・エル株式会社が提供する適性検査の1つとなります。
では、「知的能力」と「パーソナリティ(性格適性)」とは一体どのようなものなのでしょう。知的能力とは、課題を分析して原因を探り、対応可能な解決策を定め、合理的に解決に導くスキルのこと。社会で活躍するために欠かせない能力の1つです。
一方のパーソナリティは、候補者の「性格」や「考え方」を可視化するもの。候補者が前向きに仕事に取り組める人材であるか、協調性がある人材であるか、自社にマッチした人材であるかどうかなどを確認するのに役立ちます。
あらゆる側面から候補者の資質を測れることから、玉手箱は大卒の採用活動で特に活用されています。
玉手箱の測定科目
玉手箱の測定科目は、以下の4種類です。
- 計数
- 言語
- 英語
- パーソナリティ(性格)
上記のうち、候補者の「知的能力」を測定する科目が、計数・言語・英語です。具体的には計数3種類・言語3種類・英語2種類の計8種類で構成され、各科目1形式のみ出題されることとなります。たとえば、計数で「図表の読み取り」が出題されたら、最後まで「図表の読み取り」問題しか出題されません。
英語については企業によって出題されないことがあります。
候補者の「性格」や「意欲」を測定する科目が、パーソナリティです。パーソナリティでは性格に関する問題が200問程度出題されます。
玉手箱の大きな特徴は、出題内容を企業ごとに変更できること。自社のニーズに沿った問題を用意でき、効率の良い採用活動が実現できます。
玉手箱の受験方法は2つ
玉手箱の受験方法は、以下の2つです。
- Webテスト
- C-GAB(シーギャブ)
それぞれの受験方法について詳しくみていきましょう。
Webテスト
Webテストは、自宅や学校のパソコンで受験する方法です。企業が受験期間を指定し、その期間内に候補者に受験してもらう方式となります。企業が指定した期間内であれば、候補者の都合に合わせて受験できるため、候補者に負担がかからない受検スタイルとも言えるでしょう。実際に玉手箱を導入している大半の企業が、Webテストを利用しています。
注意点は、Webテストでは電卓の使用が認められていること。玉手箱の受検時間は短いため、電卓の使用が認められています。
C-GAB(シーギャブ)
候補者がテストセンターに出向き、受検する方法がC-GABです。以前はWebテストのみの実施でしたが、2013年よりC-GABが開始されました。
テストセンターで受験するC-GABを取り入れるメリットは、カンニング等の不正を防止できること。受験する人が同じ問題を解かないようにシステムが構築されていたり、持ち物にも制限があったりと、さまざまな不正への対策が行われています。
なお、Webテストでは電卓の使用が認められていますが、C-GABでは電卓の使用は認められていません。
玉手箱の所要時間と料金
つづいて玉手箱の「所要時間」と「料金」をチェックしていきます。「所要時間」と「料金」は以下の表のとおりです。
所要時間合計 | 49分 |
年間利用料 | 1,200,000〜2,500,000円 |
受検料 | 500〜1,000円 |
※税別
通常、玉手箱の所要時間は合計「49分」です。ただし、出題問題が企業によって異なるため、所要時間は企業によって変わることがあります。
玉手箱とSPIの違い
「適性検査」と聞くとSPI(エスピーアイ)を思い浮かべる方も多いでしょう。SPIとは株式会社リクルートキャリアが提供する適性検査のことで、玉手箱と同じく候補者の「知的能力」と「パーソナリティ」を測定します。
では、玉手箱とSPIの違いは一体、何なのでしょうか。それはSPIよりも玉手箱の方が「処理能力の高さが求められる」こと。
玉手箱の方がSPIよりも問題数が多く、受験時間は短くなります。たとえば、計数の四則計算では、9分で50問出題。つまり、10秒程度で1問解く必要があるのです。一方、SPIの能力検査(ペーパーテスト)では制限時間が70分で、出題数は70問。つまり、1問にかけられる時間は約1分です。
1つの問題にかけられる時間が短いため、物事を素早く理解し判断するスキルが、SPIよりも玉手箱には求められているのです。
ちなみに、SPIを実施している企業が多く、対策を練っている人が多すぎることから、あえて玉手箱を利用している企業もあるようです。
玉手箱を導入している企業
多くの企業が採用活動において玉手箱を導入しています。具体的な導入企業は以下のとおりです。※2022年9月14日
- アクセンチュア
- Amazon
- 旭化成
- アサヒビール
- 味の素
- オムロン
- TBSテレビ
- 三菱地所
- 富士通
- りそな銀行
- 三井住友銀行
- 東京ガス
- 丸紅
- 三菱商事
玉手箱は問題にかけられる時間が短いことから、金融やコンサル業界など情報を素早く的確に判断するスキルが求められる業界で重宝されています。
玉手箱を導入する効果・メリット
玉手箱を導入することで得られる効果・メリットを紹介します。
- 見極めにくい候補者の知的能力・性格が分かる
- 採用が効率化する
- 候補者の負担が少ない
- 配属先決定の判断材料にも
見極めにくい候補者の知的能力・性格が分かる
1つ目のメリットは、面接や書類・卒業学校では見極めにくい候補者の「知的能力」や「性格」がわかることです。企業が人を採用する際には学力や知能といった表面的な情報だけではなく、価値観や意欲、知的能力、感情など、あらゆる側面から適正を図ることが重要となります。
玉手箱は受検者の知的能力やパーソナリティを測定する適性検査です。多角的に受検者の適正を測定でき、雇用のミスマッチ防止に役立つでしょう。社員の定着を図りたい会社に、玉手箱は特に有効です。
採用が効率化する
2つ目のメリットは、採用のスクリーニングとして利用すると採用が効率化することです。スクリーニングとは「ふるいわけ」を意味し、自社の採用基準に満たす人のみを合格とする方法です。たとえば、「ストレス耐性が高い人」を採用したい場合、この要素に関して結果が良い人のみを次の選考に進める、という使い方ができるのです。
また、玉手箱で得た結果を面接の際に利用することで、確認できる候補者の情報が格段にアップします。候補者の資質を深く理解できるのも、玉手箱の利点です。
候補者の負担が少ない
候補者の負担が少ない点も、玉手箱のメリットです。1時間以上かかる適性検査も少なくない中、玉手箱は「49分」と、短い時間で検査を実施できます。
適性検査は候補者の負担となることが多く、「適性検査は面倒だ」と考える人も少なくありません。ほかの企業の選考が上手く進んでいる場合、選考を辞退される可能性も。
短時間で実施できる玉手箱であれば、候補者の負担とならず検査を行え、選考辞退防止に役立つでしょう。
配属先決定の判断材料にも
4つ目のメリットは配属先の判断材料にできることです。新入社員が自社で活躍するためには、その人にマッチした配属先を選ぶことが重要となります。適正にあわない職場や職務に配置した場合、離職してしまう可能性が高まるためです。
玉手箱は候補者の性格をあらゆる側面から測定可能。結果から部署のタイプと似た新入社員を配置できれば考え方が似ているため、候補者の持つ力を最大限に発揮できるでしょう。
さいごに
玉手箱は候補者の知的能力や性格を、あらゆる側面から測定できる適性検査です。候補者が自社で活躍できる人材であるかどうか測定できるだけでなく、配属先の判断材料としても活用できます。あらゆる人材評価のシーンで活用でき、人材の有効活用につながるでしょう。
また、こちらの記事では各適性検査ツールの比較を行なっています。「どのように比較すればいいの?」「予算にあった費用のサービスを知りたい」という方におすすめです。
【徹底比較】適性検査ツールを5つの視点で比較
採用活動は、企業の今後を左右するといっても過言ではありません。自社の目的に合った適性検査を活用することで、書類選考や面接のみでは把握しきれなかった情報も踏まえて、採用活動の精度や効率アップが期待できます。
当サイトでは他の適性検査ツールも紹介していますので、気になるものがあればぜひ読んでみてください。